今回は不定詞の「意味上の主語」についてお伝えします。
文の中で果たす役割によって、単語は8または10の品詞にグループ分けされますが、品詞の中でも「動詞」はとても重要な役割を持っています。その動詞が形を変えた、動名詞、不定詞、分詞の3つまとめて「準動詞」と呼ばれています。
不定詞は動詞が変化して名詞、形容詞、副詞になったものです。(このように、役割が色々あって定まらないため、不定詞という名前がついたという説もあります。)
それぞれの品詞の役割と同時に動詞の特徴も持っているため、動詞と同様、不定詞にも「動作主」がいます(あります)。
今回は不定詞の名詞的用法についてお伝えします。
問題
次の英文の不定詞の意味上の主語は誰でしょう。
1. It is important to get good exercise.
2. It is important for him to have a good sleep.
3. It is very kind of you to help my son.
4. He turned on the radio to listen to music.
5. His dream is to work abroad.
6. He expected his son to be an actor.
7. I saw him cross the street.
解答と解説
1. It is important to get good exercise.
意味上の主語が一般の人の場合は意味上の主語を示しません。 to get の意味上の主語は一般の人です。
なお、文の主語の it は仮主語 (真主語は to get good exercise)で、長い主語を避けるために仮に置かれています。
注)不定詞や動名詞を含む主部は単数扱いであることにも注意しましょう。
例
To speak three languages(またはSpeaking three languages) is necessary to get that position.
to speak three languages / speaking three languages がひとかたまりと考えられ、単数扱いです。特にこの例のように述語動詞の直前が複数形 (languages) の場合、複数と勘違いすることが多いので気をつけましょう。
2. It is important for him to have a good sleep.
意味上の主語を示す必要がある場合、for/of +人で表すため、him(→彼) が to have の意味上の主語です。
3. It is very kind of you to help my son.
意味上の主語を示す必要がある場合、for/of +人で表すため、you(あなた) が to help の意味上の主語です。
注)意味上の主語は 2. のように important / dangerous / difficult / easy / fun / hard / possible / interesting / useful などの物事の困難さ、安全性、可能性などを表す形容詞を用いる場合は for+人で表します。
それに対し、3. のように kind / polite / rude / foolish / clever / careless / sensible / honest / good / wise などの人の性質や能力などを表す形容詞を用いる場合は of +人で表します。
4. He turned on the radio to listen to music.
意味上の主語が文の主語と同じ場合は意味上の主語を示しません。 to listen の意味上の主語は he(彼) です。
5. His dream is to work abroad.
意味上の主語が文脈から明らかな場合は意味上の主語を示しません。to work abroad の意味上の主語は his(→彼) だと分かります。
6. He expected his son to be an actor.
SVO+to不定詞の構文では、O(目的語)がto不定詞の意味上の主語になります。文の主語は heで、述語動詞はexpectedなので、expectするのはheですが、to be の意味上の主語は目的語の his son です。
注)SVO+to不定詞の構文をとる動詞は、次のような動詞に限られています。
want / tell / allow / get / cause / force / encourage / enable など
補足
get / cause / force のように「人に~させる」という意味を持つ動詞は使役動詞と呼ばれ、以下のような場合に使います。
get は説得したりして何かをしてもらう場合
I will get her to make breakfast.
cause は何かが原因で、意図せずにあることを引き起こす場合
The snow caused the car to skid. (skid:スリップする)
force は無理やり強要する場合
They forced me to stay home.
7. I saw him cross the street.
不定詞の働きをしながら toがつかない動詞の原形は「原形不定詞」と呼ばれます。
see のような知覚動詞を用いた文では、C (補語) に原形不定詞の他、現在分詞 (~ing) も用いられます(詳細は後日)。
補足
saw も cross も品詞は同じ「動詞」ですが、文中の役割が違います。
saw は「述語動詞 (文の動詞)」 (略して動詞と呼ばれます )
cross は 「原形不定詞 」(略して(動詞の) 原形と呼ばれます) で、ここではC (補語) としてO (目的語) の説明をしています。
SVO+原形不定詞の文では、O(目的語)が原形不定詞の意味上の主語になります。原形不定詞 cross の意味上の主語は目的語の him(→彼) です。
注)SVO+原形不定詞の形をとる動詞は、次のような動詞に限られています。
make / have / let / see / watch / look at / hear / listen to / notice / observe など
なお、help は、help+O の後に to不定詞または 原形不定詞のどちらかを続けますが、原形不定詞の方が口語的です。文語では to 不定詞を使う傾向があります。
補足
make / have / let のように「人に~させる」という意味を持つ動詞は使役動詞と呼ばれ、以下のような場合に使います。
make は主語が強制的に~させる場合、及び意味上の主語が無意識に~させられる場合
(強制の強さは文脈によって異なります。強いときは force に近く、弱いときは cause に近いそうです)
My mother made me do my homework.
have は業者や部下などに頼んで、その人がやるべきことをしてもらう場合
(同じような用法の get との違いは、get の方が口語的と書かれている文法書もあります。また、get がその行為そのものに関心があり、have は 結果に関心があると書かれている文法書もあります。)
He had his secretary book a window table in the restaurant.
let は強制ではなく、許可する、相手の気持ちを尊重するなどの場合
My parents let me study abroad.
不定詞は動詞の要素も持っているので、正しく理解するために動作主も確認するようにしましょう。また、どの動詞がどの構文に使えるのかも確認しておきましょう。
よろしければ、こちら↓も参考にしてください。